46,    つくば出張記2〜真壁伝承館〜 2012.3.27

出張中、仕事の空き時間に「真壁のひなまつり」を見せていただきに行った真壁町。つくば市か

ら車で筑波山方面に向かって行ったのですが、真壁町に入って直ぐに何やら美しい品のある屋根

のフォルムが目に入りました。一瞬の出来事だったのですがほんとに一瞬で私の心をとらえまし

た。一目で「何かが違う・・・」と感じていました。連れて行ってくれた私の友人の奥さんに

「あの屋根は何ですか???」と尋ねたところ「真壁伝承館です。地元の住民的には賛否両論の

建築なんです。」と教えてもらいました。行ってみますと歴史資料館や図書館を併設する多目的

複合文化施設のようです。さっそく中も見せていただきましたが外観からの予想通り好いんです

ねこれが。期待を裏切られませんでした。細かく書き出すと、とてつもない事になりそうなので

簡単に書きますが、歴史的な街並の中で現代建築として成功した建築だと感じたわけです。

ここ真壁町の街並は国の「重要伝統的建造物群保存地区」に指定されています。そこに建てる

わけですから一寸考えただけでもけっこう大変なわけです。一般的にこのような歴史的な街並

の中に新たに建築を建てる場合大きく三つの手法に分けられると思います。

,そこの歴史的建造物と同じデザインで全く似せたデザインのものを建てる手法。

,そこの歴史的建造物とは全く異なるデザインであえて新旧を対比させる手法。

,そこの歴史的建造物の持つ空気感に浸透させつつも現代建築として建てる手法。

分かりやすく簡単に分けるとこの三つの手法になるかと思います。

私の考えでは1番は賛成出来ません。1番の手法ではなんだか安っぽいテーマパークのように

なってしまう危険性が大だと思います。いくら昔の建築に似せて建てても、新たな建物にはま

だ歴史がありませんから薄っぺらなものになってしまうからです。2番は建築家がよく使う手

法ですが得てして地元住民からは理解が得られません。建築家の自己満足で終わってしまう危

険性も大きいです。しかしほんとに上手に設計されたものは古い街並と対比されることで逆に

お互いが輝きます。3番目はまずそこの古い街並の緻密な調査が重要です。その調査結果を吟

味し噛み砕いて現代建築へと消化させなければなりません。下手をすると消化不良となってし

まいますからかなり気を使う難しい設計手法です。

今回のこの真壁伝承館は3の設計手法だと感じました。真壁の歴史的建造物を現代建築に見事

に消化(昇華)していると思います。

街の住人には「賛否両論」との事でしたが、おそらく「否」の方達は1番の手法を期待したの

ではないでしょうか?私は個人的には歴史的街並の「場」であっても今を生きる私達の文化は

今を生きる私達の手で造るわけですから、過去に尊敬の念を置きながら現代の建築をつくるの

が現代を生きる人間としての生き様になるのではと思います。

ただ、私がもう一つ思うのはこの「賛否両論」はとても好い事だと思います。賛否両論という

ことは、皆さんここの街並に関心があるという事ですから。一番いけないのは「無関心」で

す。「賛否両論」けっこうじゃないですか。昔、フランスのルーヴル美術館にガラスのピラ

ミッドが出現した時も賛否両論であったと記憶していますが、その時は日本で同じような事が

あってもここまで議論が白熱するかな〜???と思っていましたが、その当時の事を今回思い

出してしまいました。「賛否両論」の建築であればやはりここに建つ現代建築として成功した

のではないかと思いました。

設計は、設計組織ADH(渡辺真理+木下庸子+山口智久)だそうです。

今回ひょんな事から好い建築を見せていただきました。ありがとうございました。