28,   「あなたにとって建築とは何か?」    2010.09.29

正直言ってこの課題には面食らいました。あれから30年程経った今でもこの課題は究極です。

でも、「あなたにとって建築とは何か?」と、この言葉を受けて頭で考えると答えはなかなか出て

きませんが最近フと感じました。頭で考えている間は答えは出てきませんが、自分が今までやって

きた仕事を一つ一つ振り返ってみるとその答えらしきものが感じられてきます。

では、私にとって建築とは?それは「人との喜びの共有」です。建築は人との喜びの共有の媒体の

ようなものだと今の私は思います。

学生の頃からずっと考えていました。考えても答えは見つかりませんでしたが、振り返ってそう感

じます。今思えば、当時大学の先生達もその課題を出したその時に学生が答えを出せるとは最初か

ら思っていなかったと思います。それはやはり仕事をしてきた軌跡を振り返った時に見えてくるも

のかもしれませんね。もしかしたらこの課題は数十年後の学生に対する先生達からの最初のプレゼ

ントだったかもしれませんね。

「人との喜びの共有」にはいろいろな人との喜びの共有があります。まずはクライアント(オーナー)との喜びの共有でしょうか。最低でもこのクライアントとの喜びの共有が出来ない建築なん

て考えたくもありません。他にも公共建築のようなものであればそれを使ってくれる不特定多数の

人達。又、建築は多くの建築関係者、職人さんで作られます。作っていく中での喜びの共有もあり

ます。又、単に道行く人達がほんの少しでも「何かちょっと好いんじゃないこの家」と感じてくれ

るようなそんな小さな喜びの共有、いろいろありますね。

左写真は「カヤックのある家」の

一年点検時に撮ったトイレの小さな

ニッチです。右写真は同じ場所の

二年点検時の写真です。このニッチ

は日常の暮らしの中で小さな喜びを

見つけてくれるきっかけになれば好

いな〜と思い作った小さなニッチで

す。これを見た時、私も嬉しくなり

ました。

先日の日曜日に二年前に竣工した「Dear麻生」の前を通りました。

正面に植えたナナカマドが青々と葉を付け大き

く成長していました。他にヘンリーヅタも好い

感じで成長してだんだんと設計当初に思い描い

ていた姿に近づいてきました。これもオーナー

さんの手入れが行き届いているからです。道行

く人が少しでも「なんかホっとして好いネ」と

ほんの少しでも感じてくれたら嬉しいですね。

上写真は東区に4年前の3月に竣工した「SCREEN」です。先日、近くを通ったので寄らせてい

ただきました。外観は竣工当時となんら変わりなく綺麗でした。クライアントにお聞きしたとこ

ろ、やはり必ず一年に一度水洗いをしていただいているようです。正面に植えたモクレンも竣工

当時は30センチくらいの苗木でしたが今は私の背丈以上に大きくなり花も毎年咲かせてるとの

事でした。玄関へのアプローチもいろいろと工夫をされている様子です。4年前と同じように保

つ部分は保ちながら成長させてくれているようです。やはり嬉しいですね。

これからも「あなたにとって建築とは何か?」。自分に問いかけて仕事をしてゆきたいものです。